ブロードバンドアクセスラインとインターネットの関係


  • わかりやすさを優先するために、多少、正確さを欠いた表現もありますが、一般的に、必要な考え方は理解できると思います。

  • また、専門的な勉強をする前にイメージをつかむ助けにもなるのではないかと自負しております。

  • バイトという単位は、デジタル信号の8つの0と1の信号の塊を表し、1バイトで半角文字1文字を区別できる情報をもっています。
    単純に言うと、100文字の情報は、100バイトで伝送できます。日本語では、2バイトで1文字を表すので、100文字の情報を送るためには、200バイト必要です(現在、一般的に使われてるシフトJISコードの場合)。
    ※ 半角のカナは、1バイトですが、これは日本独自のものですから、インターネットの世界では、通常は使用しません。

パケット伝送のイメージ

◆ パケットの作成

データは、決められたサイズの大きさに分割されて、送られます。

  • 決められたサイズとは、MSS(Maximum Segment Size ) 分割される最大サイズで、通常のLANでは1460バイト、フレッツでは、1414バイトが標準です。

  • 分割されたデータには、ヘッダと呼ばれるデータの番号・送信元・送信先・エラー制御情報などのデータが付加されて、ひとつの小包、すなわちパケットが完成します。

 

パケット(小包)として運ばれます。

  • 通常、40バイトのヘッダ情報が付加され、1つのパケットサイズは、イーサネット方式のLANでは、最大1500バイトになります(フレッツでは、1454バイトになります)。

  • このパケットサイズは、MTU (Maximum Transmission Unit)と呼ばれ、送信可能な最大サイズです。

  • MTUは、ネットワークの構成で違いがあり、通信途中で、送信可能なサイズを超えるパケットサイズのものがくると、そこで、送信可能なサイズに分割(フラグメンテ−ション)されます。

  • 例えば、 1500バイトのパケットが1454バイトが最大送信サイズのネットワークを通るときには、ヘッダを取り出して、情報を再構成してから、データを分割します。

    • 1460バイトのデータは大きすぎるので、1414バイトと46バイトに分割され、再度、ヘッダを付加して、2つのパケットとして、伝送されます。このために、本来1つの小包でよいものが2つになってしまいます。

    • このような理由で、最適なMTU値で伝送しないと、分割されることにより、効率の悪い通信になってしまい、結果的に通信速度が低下するわけです。

◆ インターネット網(ネットワーク)のイメージ

    ↓ウェブサーバ

  • 上図は、簡略したイメージ図ですが、インターネットがメッシュ(くもの巣)のように、互いに接続されていることがわかると思います。

  • ネット上にたくさんのパケットが流れています。そして、それは、届いた順に、ルータという装置で中継されて伝送されていきます。

  • ルータとは、簡単に言うと道筋を決めて配送するための装置で、ルータは届いたパケットのヘッダ情報を見て、他のルータと情報交換して蓄えた情報を元に、最適な経路と思われる次のルータへパケットを送ります(バケツリレーのような仕組みとよく言われます)。

  • もし、送ろうとする経路が故障やメンテナンス中でつかないときは、上図でもわかるように別の経路へ送ることもできるので、どこかの経路を使って、パケットは目的地へ辿りつくことが出来ます。

  • ルータは、自分のネットワーク宛てのパケットが着たら、自分のネットワークの中の宛先へパケットを送ります。

  • 送られてきたパケットは、いろいろなネットワークを経て、届き、他のパケットとも混ざりあって、伝送されるので、到着したパケットは順番どおりに届かないこともありますが、パケットのヘッダには番号が記録されているので、受信側では、一旦メモリに受信したパケットを保存して、ヘッダの内容を見ながら、順番どおりにデータを取り出して、再生します。

  • 上図で、各ルータ間をつないでいる土管の図が回線のイメージですが、見てわかるように土管の太さにもいろいろあります。つまり、各ルータ間を結んでいる回線の速度はまちまちだと言うことです。

  • 経路に途中に低速の回線のルートがあった場合は、全体の通信速度はそのルートの回線速度になります。ちょうど、ビンの口の大きさによって、流れ出る水の速さが変わることから、全体の回線速度を低下させる原因になるところをボトルネックと呼びます(単に回線速度が遅い場合以外にも、回線混雑していて、パケットの流れが一時的に遅くなる場合もあります)。

■ 下図はあるサイトまでの経路の応答時間を追跡したものです。目的地まで22個所を経由して辿りついていますが、20,21辺りに応答が遅い部分があって、全体の応答速度を低下させているのがわかります。




■ 下図は、Yahoo! UK & Ireland へ時間帯を変えて、アクセスしたときのルート追ったものですが、応答はサンノゼのサーバがしていますが、経由したルートは2回のアクセスでそれぞれ異なっています。

↓日本→ロス→ワシントン→ロンドン→サンノゼと世界を駆け巡って、辿りついている様子がわかります(実際には途中でも、たくさんの経路を経由していますが、図では主な都市のみが表示されています)。

↓日本→イスタンブール辺り→ワシントン→サンノゼ


・この例のように、インターネットの通信は常に同じ経路を通って、やり取りされるとは限らないのです。もちろん、応答時間も経路によって異なってきます。


◆ もっと詳しく知りたい方へ

  • ルータは、パケットヘッダの宛先を見て、次のルータへ中継するが、宛先からどのルータへ送ればよいのか判断する情報が必要である。この情報をルーティングテーブルと呼び、ルータはこの情報を保持していて、このテーブルを元に、中継先のルータを判断する。

  • ルーティングテーブルの作成方法に2種類あり、1つはスタティック(静的)ルーティングと呼ばれ、管理者が手動で作成・維持する。この方法は、人手がかかるため、大規模なネットワークでは、維持が困難である。

  • そこで、インターネットのような大規模なネットワークでは、ダイナミック(動的)ルーティングと言う手法が使われる。この方法は、ルータ同士が取り決められた手順に従って、ルーティング情報を交換しあい、常に最新のルーティングテーブルを自動的に作成・更新する。

  • インターネットのネットワークは、もともと、1960年代の冷戦時代に、当時の中央集中型のネットワークを、核戦争が起きたときに情報が途絶えることがない、故障に強いネットワークを構築する目的で、分散管理型として、米国防省高等研究計画局:ARPA(アルパ)が開発した、アルパネットが前身である。

  • 1970年代、軍事目的ののみで使われたいたこの技術を、全米科学財団(NSF)が1979年に創立したコンピュータ科学研究ネットワーク(CSnet)として、独自のネットワークを構築した。そして、多くの研究機関や大学をこの方法で結んで、1989年にNSFnetへと発展していった。

  • 1982年、CSnetとアルパネットとも互いに結ばれ、1983年通信規約TCP/IPを採用、1990年に、米国防総省はミルネットと言う軍事専用のネットワークを構築し、アルパネットとCSnetは、NSFnetとして、現在のインターネットの基礎が確立された。

  • それまで、非商用が原則であったこのネットワークは、1995年に民間に委託され、政府の管理を離れ、商用化へと開放された。

  • インターネットへ接続するための手段としては、専用線により常時接続する方法が主流だったが、誰もが手軽に利用できるようにするため、ダイヤルアップにより、リモートアクセスする方法を使い、インターネットへの接続を仲介するサービスを提供するプロバイダと呼ばれる事業者により、個人でもインターネットが利用できるようになった。

  • プロバイダ自体も多数のルータで構成されたネットワークで構成されている。このプロバイダのネットワーク間を網の目のように結ぶことで、巨大なインターネットと言うネットワークが構成されている。

  • プロバイダ・企業・研究機関などのネットワークをひとつの塊として考えて、AS(自律システム)を呼んでいる。インターネットは、AS単位で互いに接続されていて、直接、接続されている場合と、多数のプロバイダ同士が集まって他のプロバイダと相互接続するIX(インターネットエクスチェンジ)と言う場所で接続される場合がある(主に、IXは、高性能なLANスイッチで構成されている)。

  • 話は、ダイナミック(動的)ルーティングに戻るが、巨大なインターネット全体で、ルータが情報交換するのは無理があるので、インターネット全体としては、AS単位でルーティングを行う(ひとつのプロバイダ内では、プロバイダ内のルータ間で情報交換が行われる)。ASには、IPアドレス同様に16ビットのAS番号が付与され、管理されている。

  • AS内でのルーティングテーブルの情報交換に使われるプロトコル(通信手順)は、IGP(インターナル・ゲートウェイ・プロトコル)と呼ばれ、RIPやOSPFと言うプロトコルがよく使われる。

  • AS間では、EGP(エクスターナル・ゲートウェイ・プロトコル)と呼ばれ、主に、BGP-4と呼ばれるプロトコルが使われ、事実上の標準である。

  • われわれがインターネットを利用するときには、まず、プロバイダのルータでパケットが中継され、宛先から、どのプロバイダへ中継すればよいかをルーティングテーブルから調べて、AS単位で中継され、該当のプロバイダ内のルータで、目的のサーバまで、パケットが中継されて届けられる。

  • 基本的にAS間のルーティングでは、もっとも最短で届くように次のプロバイダへ中継されるが、AS間は全世界とつながっていて、AS毎のポリシーによって、ルーティングテーブルが維持・管理されているため、時には、国内のサーバへアクセスするのに、海外のサーバを経由する場合もないとは限らない。

  • BGP-4でのルーティングはシンプルで、簡単に言ってしまえば、どのプロバイダ(AS)のへ中継すればよいかを判断するだけである。経路が複数あったら、経由するプロバイダの数が少ないほうを選ぶ。

  • 実際には、経由するプロバイダが海外であったり、プロバイダ内の中継回線が低速だったりすると、経由数が少ないルートが最短かもしれないが、最適とは言えない場合もありうる。

  • ゆえに、インターネット全体が中継回線やサーバの能力がブロードバンド化に対応するまでは、ADSLや光のアクセスラインを使っても、すべてにおいて、高速通信が可能になるとは限らないわけである。

  • そこで、フレッツを例にすると、アクセスラインから、インターネットへ出る前の地域IP網内にサーバをおいて、サービスすれば、ブロードバンドの能力を発揮できるサービスの提供が可能で、2002/7月現在で、フレッツスクエア内でのサービスやブローバと言ったサービスが提供されつつある。

  • 映像系のコンテンツ配信では、回線速度が2Mbps〜6Mbpsあれば、VHSの画質からDVD画質まで提供可能であるが、送り出すほうのサーバにも負担が多くかかる。

  • サーバに負荷をかけないで映像系コンテンツを配信する仕組みとして、IPマルチキャストがある。これは、パケットを中継するルータやスイッチというような機器が必要な宛先に対して、パケットをコピーして送る方式。
    従来のサーバとクライアントが1体1で通信するユニキャストに対して、マルチキャストと呼ぶ。
    NTTのIPv6方式に対応する光プレミアムサービスで提供されている。

  • ブロードバンドへ対応するためには、サーバ側も高性能である必要があるが、インターフェースに速度には限度があるので、サーバを複数設置して、負荷分散装置(ロードバランサ)により、利用者から見れば、相手は1台のサーバに見えるが、実際には、複数のサーバが対応する構成をとるのが一般的だ。


■ まとめ

  • ブロードバンド以前は、ユーザーからプロバイダへ接続する回線(アクセスライン)が、ISDNでも64Kbpsだったので、アクセスラインがボトルネックとなって通信速度が決まっていましたが、ADSLなどの高速回線がアクセスラインとなると、今度はインターネット上の経路の中で遅い回線部分がボトルネックになります。

  • インターネットは、様々なネットワークが結びついた集合体で、超高速回線で結ばれている経路もあれば、6Mbpsやいまだに128Kbpsでサーバを公開しているような場合もあります(徐々に解消されています)。

  • ブロードバンドでアクセスラインの速度が6Mbpsあっても、目的地のサーバへの回線速度に遅い部分があれば、その速度になります。また、通常のサイトを閲覧する場合には1ページを表示するためのデータサイズは、せいぜい数キロバイトの容量ですから、どんなにアクセスラインの速度が速くても受信するデータ量が少ない場合は、それほどアクセスラインの速度は気にならないでしょう(最近はブロードバンドを想定したHP作りやコンテンツも増えているので気になるかもしれません)。
    また、アクセス回線が、300Kbpsでも6Mbpsでも表示速度は、旧型のパソコンの場合、処理能力(特にグラフィック関係)に影響される場合が多いでしょう。

  • もちろん、ブロードバンドにすれば、アクセスラインでのボトルネックが解消されるので、インターネットの閲覧(ネットサーフィン)が快適になることは、確かです。

  • しかし、現状のインターネット環境では、ADSLの1.5Mメニューと8Mメニュー速度の差(あるいは、環境の違いで、2Mbpsしか速度が発揮できない人と6Mbpsの速度が出る人との違い)が、本当に体感できるのは、ブロードバンド向けのコンテンツで、映像や動画など大容量のデータを受信する場合でしょう。