ブロードバンドルータの導入


■ルーターとは

  • インターネットには、世界中のコンピュータが接続されていますが、このコンピュータ間で通信をするためには、相手を特定するアドレス(住所)が必要です。

  • このアドレスはちょうど電話番号と同じように各コンピュータにひとつ割り当てられています。このアドレスの割り当ては、アドレスを管理している団体により、管理されていて、重複した番号が割り当てられることはありません。

  • このアドレスはIPアドレスと呼ばれますが、人が扱うのに番号は分かりにくいので、www.yahoo.co.jp などという名称を使って通信できるような仕組みを作っています。ブラウザのアドレス欄に www.yahoo.co.jp と入力すると、この名称を実際に通信をするための番号に変換してくれるコンピュータに問い合わせて、番号を調べ、通信をします。実際にはブラウザはその番号を元にホームページを表示してくれるコンピュータに接続するわけです。

  • この名前を変換してくれるコンピュータをDNSサーバと呼びます。www.yahoo.co.jp のIPアドレスは、210.80.243.19 です。ブラウザのアドレス欄に直接この番号だけを入力してEnterキーを押してみてください。DNSサーバへ問い合わせることなく、直接、YahooのHPが表示されるはずです。

  • この番号は世界でひとつの番号なので、インターネット上のコンピュータが増えるにしたがって、割り当てる番号が足りなくなってきています。そこで、現在、新しい番号体系への移行準備が進んでいます。この番号はグローバルアドレスと呼ばれます。

  • 私たちがインターネットを利用する場合もこの番号が必要です。YahooのHPを表示するときには、Yahooのサーバへ表示するためのデータを送るようにブラウザが依頼し、Yahooのサーバは依頼をかけてきたコンピュータの番号へ情報を返信します。つまり、通信をするためには、互いを識別するためにグローバルアドレスが必要なのです。

  • しかし、グローバルアドレスは数に限りがあるので、通常はプロバイダのサービスを利用してインターネットへ接続します。プロバイダは管理団体(JPNIC等)から割り当てられたグローバルアドレスを複数所有しています。

  • 我々はプロバイダへ接続した時に、グローバルアドレスの貸し出しを受けることで、インターネットとの通信を可能にしています。この貸し出しは接続の都度、プロバイダが持っているアドレスの中で空いているアドレスが割り当てられます。 特別な契約をしない限り、借りられるグローバルアドレスは1つのみです。

  • パソコンが1台のみの場合は、モデムへ直接接続すればOKですが、複数台のパソコンで同時にインターネットを利用しようとするとそれではダメです。モデムにハブと言う機器をつなげば、LANケーブルを分岐でき、複数のパソコンを線上では接続できるようになります。ハブは分岐装置のようなものです(実際には他にも大切な機能がありますが・・・)。

  • しかし、プロバイダからはひとつのグローバルアドレスしかもらえないので、インターネットと通信する際には、グローバルアドレスの貸し出しを受けている1台としか通信できません。

  • そこでルータが登場します。ADSLモデムに接続されたルータは、プロバイダのサーバと接続して、グローバルアドレスを借り受けます。ルータには、ハブを内蔵しているものも多くあり、複数のパソコンをルータへ接続できます。

  • ルータとインターネット側を接続する部分はWANポートと呼び、ADSLモデムと接続します。パソコンを接続する側はLANポートと呼び、複数のパソコンと接続ができます。

  • アドレスには、インターネットでは使用しないプライベートアドレスと言う番号があります。通常、ルータはLAN側に接続されたパソコンには、このプライベートアドレスを自動的に割り当てます。ルータは自分が割り当てたパソコンを把握し、パソコンがインターネットと通信しようとすると、ルータがプロバイダから借り受けているグローバルアドレスを使って、サーバと通信し、要求のあったパソコンに返事を返してやります。

  • このようにルータはひとつのグローバルアドレスを使って、LAN側に接続された複数のパソコンの要求を仲介して、ひとつのグローバルアドレスで、複数のパソコンがインターネットと通信できるようにする働きをします(IPマスカレードやNAPT・ENATなどと呼ばれる機能です)。

  • ただ、対戦ゲームなどは、この仲介機能がうまく働かず、モデムと直接接続する必要がある場合もあります。もちろん、この場合は、1台のパソコンしか利用できません。最近では、ルータにも対戦ゲームも対応可能なものが増えてきました。

  • ルータを介すると利用できないサービスも設定の仕方で解決できる場合もありますし、ルータ経由でも特殊なサービスを簡単に利用できるようにする新しい仕組みも考えられ、対応ルータも登場しつつあります。

  • ルータを利用するもうひとつのメリットはセキュリティー面です。モデムへパソコンを直接接続している場合、パソコン側で誤った設定をすると外部からパソコンのハードディスクの内容を覗かれたり、改竄される危険性が出てきます(普通の利用法をしている場合は、それほど心配することはありません)。

  • ルータでは、LAN側のパソコンとはインターネットと通信できないプライベートアドレスでやり取りするため、外部から侵入される危険性は少なくなります。加えて、メーカにより、機能の差はありますが、一般的に特定の通信を遮断するフィルタリングと言う機能を備えており、セキュリティーは向上します。

  • といっても、一般的なユーザは、ウィルス添付メールへの警戒と怪しげなサイトへはアクセスしないなどを心がけるほうが大切です(このような被害はルータ経由でも防げません)。

  • ルーターにも種類があり、インターネット用途で使われるものは、IPルーターと呼ばれます。IPルーターの中でも、回線として、ブロードバンドが使えることやPPPoE機能をもっているものを、ブロードバンドルーターと呼んでいます。

・PPPoEとは

一般にダイヤルアップで接続する場合には、PPP(Point To Point Protocol)と呼ばれる通信手順(プロトコル)が使われます。プロバイダは、このPPPの機能を利用して、IDとパスワードで利用者を確認(認証)してサービスを提供します(PPPは、WANで利用されるプロトコルです)。

ADSLなどでは、回線はダイヤルアップではなく、LANという仕組みで常に接続された状態となります。Yahoo!BBなどでは自分自身がプロバイダも兼ねているので、認証という手順は不要です。

地域系NTTでは、業務範囲の規制でプロバイダ事業は出来ないために回線とプロバイダは別々に提供することになります。回線はIP網と呼ばれるLAN上に接続され、いつでも使用できる状態ですが、インターネットへ接続するためには、IP網からプロバイダへ接続する必要が出てきます。

IP網にはフレッツに対応する複数のプロバイダが接続しています。利用する側は、この複数のプロバイダの中から、契約している業者を選んで、接続する必要があります。PPPでは電話回線を利用して接続しますが、ADSLなどではLAN上から接続するので、別の仕組みが必要となります。

一般的にLANでは、イーサネット(Ethernet)と呼ばれる通信方式が使われており、LAN=イーサネットと考えてもよいでしょう。PPPoE(PPP over Ethernet)は、LAN上でPPPと同じ使い方をするために考えられた仕組みで、一般に、IDの@マーク以降でプロバイダを識別し、@マークの前のIDとパスワードで、利用者を特定し、プロバイダサービスを提供します。

・PPPoA(PPP over ATM)というのもありますが、これは、ATMと言う専用の高速回線を利用してサービスを行っている事業者がPPPoEと同様の機能を実現するためのものです。

■選択の目安

1、価格も大切ですが、積極的にファームウェアのバージョンアップなどを行っているなど、サポート面も考慮に入れておくとよいでしょう。

・ファームウェア

機器を動作させるために機器内部の不揮発性メモリ等へ書き込まれているのソフトウェアで、新しい機能への対応や不具合の解消などの必要に応じて、書きかえが可能なものが主流。

書きかえは、通常、メーカーのホームページなどからパソコンに、ソフトをダウンロードしてからそれを実行して、パソコン上からシリアル・LAN・USBなどのインターフェースを介して行う。

・不揮発性メモリ

電源を切ってもデータが保持されるメモリ。設定情報やファームウェアなどの比較的小さなサイズのデータやソフトウェアなどを記憶させるために使われる。

 

2、スループット値については、現在、明確な測定基準がないので、単純に製品間の比較は難しいのですが、概ね、回線速度の2倍前後のスループットを持つ製品を選ぶと良いでしょう。

・スループット

大雑把に言うとルーターを介して通信する時の速度のこと。例えば、ADSL8Mbpsの回線、5Mbpsの実効速度が得られる環境で、パソコンとモデムを直接接続して、1台のパソコンで利用する場合は、実効速度をそのまま利用できるが、ルーターを介して利用する場合は、ルーターのスループットがそれに見合うものでないと、ルーターが速度制限の原因(ボトルネック)になり、実効速度を発揮できない。

パソコン等が接続される側をLAN(ラン)側、回線が接続される側をWAN(ワン)側と呼び、この間の通信速度をスループットと考えれば良い。

カタログ等に記載されているスループットは測定基準を注意して比較する必要がある。例えば、FTP転送測定では送受信するパケットサイズが大きいので非常によい値がでるが、HTTP(Webアクセス)では半分近く低下する場合がある。

また、実際に使用したときに、多くのフィルタ設定をした場合は負荷によってもカタログ値よりスループットが低下する場合もあるので、多少、余裕があった方がよいかもしれない(フィルタの機能によって、影響の大小は異なる)。

一般にIPマスカレードをONにして、FTPでファイルをダウンロードした場合の結果をもとに測定されることが多いとされている。

また、WAN側ポートの速度によっても値が変わる。例えば、WAN側を10BASE-Tに固定して測定した値と100BASE-Tでの値は異なるので、使用しているモデムなどのポートが100BASE-Tに対応しているか、10BASE-Tのみなのかも注意しなくてはならない。

10BASE-T:通信速度は、10Mbps 100BASE-T:通信速度は、100Mbps

例えば、コレガのBAR SW-4P Proでは、スループットは37.5Mbps前後とされているが、10BASE-Tでモデムなどの機器と接続した場合は、8.5Mbps前後まで低下するとされている(しかし、10BASE-Tのインターフェースしか持たないモデムは当然、速くてもADSL8Mタイプなので、回線の実効速度は6Mbps前後と思われる、従って、8.5Mbpsの実効速度は十分に余裕がある値なので、問題は無いと思われる)。

100BASE-Tでのスループットが問題となるのは、Bフレッツなどの光ファイバーなどを利用した場合である。回線速度が10Mbps以下のサービスで、接続機器のインターフェースが10BASE-Tのみの場合は、ルーターも10BASE-Tでの実効速度を考慮して選択する必要がある。

 

3、ブロードバンド専用のサービスを利用するために、プロバイダ以外に、地域IP網内のサービスへ接続するケースも増えてきているので、接続先が複数設定できる機能を持つタイプを選ぶと便利です。

・例えば、インターネットへはプロバイダへ接続しますが、地域IP網内のフレッツスクエア・フレッツコミュニケーション・ブローバ・BBエキサイトへ接続する場合は別の接続設定が必要です。

・これらの地域IP網を利用したブロードバンド専用サービスとインターネットを同時に利用できるように、フレッツサービス(フレッツISDNを除く)では、2セッションサービスが始まりました。

・これは、同時に2つのサービスに接続して、同時に利用できるものです。

・直接接続の場合は、2セッション対応のフレッツ接続ツールへのバージョンアップが必要です。

・ルータも、これに併せて、ファームウェアのバージョンアップなども始まっていますし、新製品ではほとんど対応していますが、購入前に確認しておきましょう。