ADSLサービスの選択基準


  • 交換所からの距離に制限があり、地方都市や郊外では、交換所からの距離が問題でまったくサービスが受けられない地域が多くあります。

  • ADSLでは、 高い周波数を使うため、まず、交換所から距離が問題になります。ケーブルが長く、細いほど信号のレベルは距離に応じて減衰していきますが、これは周波数に応じて指数関数的に減衰していく特性があります。

  • 日本では、収容条件は、大都市で半径約1.5km、中都市で半径約3km程度、地方都市部では収容条件の限界値である半径7km以内です(実際のケーブルルート距離では最大10kmです)。

    概ね2Km以内では、1.5M,8M,12M,24M,40Mなどのサービスが提供されていれば、自由に選択可能です。

    2Kmを超えると、8M方式では条件が厳しく、1.5Mやモア12Mなどの長距離に対応できるサービスを選択する必要があります。

    4Km以上では、 モア12Mなどの長距離対応のサービスを選択する必要があります。ちなみに、私は5.5Kmあり、モア12Mプランで平均450Kb/sの速度で利用できています。

  • 実際には電話交換所からユーザー宅までの電話線の長さは、平均で2.2km、地方では7km近くある場合も多数あります(ちなみに私の場合は、5.6kmでした)。

  • 高い周波数を使うADSLでは、電話交換所からユーザー宅までの距離が長くなるほど減衰の度合いが激しく、概ね、交換所から2.5km以内がベストで、ケーブルの状態によっても条件は変わります。

  • ※ ケーブルの状態とはケーブルの劣化や同一ケーブル内に収容されている、ISDN回線・デジタルアクセスやデジタルリーチなどの専用線・OCNアクセスライン・PHS基地局回線などの信号の漏えいによる干渉の影響など。

  •  また、採用している方式によっても条件は変わります。

  • Yahoo!BBのが使用するAnnexA方式のモデムは、ケーブル内の近くの場所にISDN回線があると干渉を受けて速度が低下する。
    ・他の業者の採用しているAnnexC方式のモデムは、ISDNとの干渉を抑える仕様のため、比較的影響は少ない。
    ・Yahoo!BBが、AnnexA方式を採用しているのは、主にコストメリットの為。

  • ADSLでは、方式・距離・ケーブルの収容状況により、通信速度が変化するので申し込み前に、自分の置かれている環境で、どの程度の通信速度が得られるかを確認してから、ADSLへの切替を行うのがベストです。

・現在 地域系NTTなどで、ユーザー宅から最寄りのNTT局を結ぶ電話線の電話線の長さと、160kHz信号の損失量を公開して、加入前にADSLサービスで高速伝送できるかどうかを判断できるように情報公開を行っています。

◆ サービスエリアや「線路情報」・「直線距離」の確認

NTT東日本エリア

NTT西日本エリア

  • もちろん、「直線距離」より「線路情報」の方が参考になります。

  • 「線路情報」も実測値ではなく、あくまでもNTTの設備管理資料から計算した結果による、参考値ですから、実際に測った値と全く同じと言うわけではありません。しかし、「直線距離」よりも、精度が高く、より参考になるでしょう。

  • 表示される結果は「線路距離長」と「伝送損失」の2つです。

  • 線路距離長は、エンドユーザー宅とNTT収容局の線路長です。

  • 伝送損失は、DSLサービスの品質評価に用いる160KHz電気信号の劣化を計算した値となっています。伝送損失が大きくなるほど信号は届きにくくなり、通信速度は低下します。

  • 「直線距離」のデータしか得られない場合には、ケーブルは直線で敷設されているわけではないので、直線距離の1.2〜1.6倍前後を目安にしましょう。

  • また、既に途中まで光ケーブルに収容されている場合もあり、この場合は利用は不可能ですが、通常のメタリックケーブルに空きがあれば、収容変更により、対応してくれる場合もあります(収容変更工事には別途費用が必要になる場合がある フレッツシリーズのADSL工事料、契約者回線等変更工事費を参照)。

  • RT(リモートターミナル)という交換機からの延長交換所に収容されている場合も利用不可で、収容変更が必要となりますが、RTが設置されている場合は交換所からの距離が遠い場合なので、収容変更でも難しい場合もあります。


具体的な例

■ NTT方式でのシュミレーション結果では、

・5km前後 => 長距離対応のサービスならば、ISDNよりは速い速度が得られます、ただし、条件によっては接続が不安定になったり、接続さえ出来ない可能性もあります。

・4km前後 => 条件により、接続可能ですが、接続可能ならば、ISDN以上の速度は得られると思われます。

・3km前後 => ほぼ、大丈夫と思われますが、ケーブルの収容状態によっては、不安定になる可能性はあります。速度的にはある程度は得られると思われます。

・2km前後 => 条件的にはベストですが、多少の速度増減の可能性はあります。

・1km前後 => 距離的にはまったく問題はありませんが、同じケーブルの収容されている他の回線の影響など、予期できないこともあり、100%の保証は出来ませんが、わずかな調整で何とかなると思われます。

※ YahooBBのフルレート方式では、周波数帯域が広いため、距離による制限は大きいと思われます。NTT方式の様にISDNとの干渉を防ぐための干渉が起こるタイミングでの速度制御などは考慮されていないでしょうから、ISDN回線との干渉による影響も考えられます。

 1.5Mプランと8Mプランの選択の目安

  • 1.5M方式よりも、伝送周波数の高い8M方式の方が距離や干渉による制限を受けます。

  • 一般に公表されているデータによるとシュミレーションでは、実際の線路長が3kmを超えた辺りで、1.5M方式と8M方式の速度差が無くなり、条件によっては、1.5M方式の方が速度が高くなってきます。

  • 実測値でも、線路長が2km以内では、8M方式でも概ね6Mb/s前後の速度が得られる例が多くなっていますが、線路長が3.5kmを超えた辺りでは、1.5Mb/sを下回るケースが増えてきて、条件によっては、1.5M方式よりも速度低下が顕著に現れると言う結果になっています。

  • 現状ではインターネット全体の平均的回線速度が速くないので、ブロードバンド向けの一部のコンテンツを除いて、1.5Mと8Mの体感速度の差は、ほとんど無いと思われますが、フレッツADSLの場合、1.5Mプランと8Mプランの月々の料金差は、200円(2002/02現在)なので、取りあえず、8Mプランを選択するのも手かも知れません。

  • また、8Mタイプのモデムのほとんどの製品が1.5Mと8Mの両方に対応しています。ですから、1.5Mから8Mへ切り替えるときは、モデムを交換しておけば、NTTが局内の工事を完了した時点で、8Mへ切り替わります(切替工事の日は待機しておく必要はないでしょうが、切替後にはモデムの電源を入れなおして、リセットしておくほうが良いでしょう)。

  • なお、フレッツの場合は8Mタイプに切り替えた後でも、1.5M専用モデムも動作する場合があるようです(もちろん、1.5M以上の速度は出ません)。従って、切替日にモデムを交換していなくても、インターネットが使えるので工事の完了確認は、8Mモデムに交換して、1.5M以上の速度が出ることで確認する必要があります(前述のように線路長が長い場合は、1.5M以上の速度はでない場合もあります)。

■ エコーキャンセラなどの新技術を使った12M,24M,40Mなどの高速サービスが提供されていますが、これらのサービスは概ねケーブル区間距離が2Km以内のユーザーでは高速化の効果があります。また、フレッツ・ADSL モア 12Mプランなどでは、高速化の他に長距離化の機能があり、従来、距離制限でサービスを受けられなかったユーザーでもサービスを受けられる可能性があります(ただし、ISDNよりは遙かに速いですが、速度は遅くなります)。

  • このサービスは、各社毎に特徴がありますが、どこの方式も速度アップが望めるのは、現状で、非常に環境が良くて、ほぼ最大に近い実行速度が得られているユーザーに限られるようです。

  • この方式のメリットは、利用限界線路距離が長くなることで、距離が遠くなれば、当然、速度は低下することが予想されますが、7kmまでのユーザーまで利用できるようになるようです。

  • 今までの方式では、利用限界線路距離が約4〜5Kmだったのが、約6〜7Kmをカバーできることになり、国内では、大半のユーザーは、線路長は7km以内に収容されているので、今まで、利用を諦めていたユーザーも、速度的には、300〜500Kbps前後と遅いながらも、ADSLを利用できるようになる可能性があります。

  • 線路距離により、速度が十分に得られないユーザーは、ブロードバンドに特化したサービスを受けたい場合は、Bフレッツ(光)を利用するしかありません(現状では・・)が、単に、インターネットを快適に利用したいだけなら、300〜500Kbps前後でも、ISDNの64Kbpsに比べれば、ずいぶん快適になるはずです。

  • 料金面でも、ISDNより、電話回線の基本料が安くなるため、フレッツISDNを利用する場合と、差はありません。

  • ISDNは、電話2回線を利用できて、i・ナンバーサービスで電話番号も二つ使える(FAX専用番号などに使われることが多い)メリットがあるため、基本料も一般電話より割高になっています。

  • ISDNの、電話2回線分を使えるメリットが必要な場合は、ISDN回線はそのままで、タイプ2と言う電話を使わないで、ADSLのみを使うサービスを利用することもできます(この場合は、ISDNとの干渉を考慮して、NTTのフレッツADSLを利用するほうがトラブルが少ないと思います)。

 12M,24M,40Mプラン選択の目安

  • 方式の特性上、交換所(NTT収容ビル)から1km前後(伝送損失10db前後)であれば、高速化の効果が期待できます。

  • また、1〜2km程度(伝送損失10〜30db程度)でも、回線状況(ノイズ等の状態)が良い場合には、高速での通信の可能性もあります(条件によっては、どのサービスでも、それほど速度差はでない場合もありますが、月額費用差はわずかなので、速いサービスを選んでおけばよいと思います)。

  • すべてのプランで言えることですが、NTTの地域IP網やプロバイダ側の設備の整備状況や、他回線との干渉、宅内の通信設備等の影響により、通信速度が低下する場合があるので、常に同じ通信速度で利用できるとは限りません(速度測定サイトでの結果はあくまでも目安にすぎません、ネットワークの混雑状況により、測定する時間帯や測定サイトとの経路によって、測定結果は変化します)。

  • 結論として、12M,24M,40Mタイプのメリットがあるのは、概ね、 交換所(NTT収容ビル)から2km前後で、1Km前後では期待大ですが、2Km前後では、条件により効果は少ない場合もあります。しかし、料金差はわずかなので、提供されているもっとも速いプランを選択してもよいのではないかと思います。

  • 交換所(NTT収容ビル)から2Km〜4Km前後離れているユーザーは、8Mプランよりも距離的制限の少ない1.5Mや12Mプランを選択するほうがよいかもしれません。

  • 交換所(NTT収容ビル)から4Km〜7Kmでは、従来のプランではサービス自体を受けられませんでしたが、長距離化機能により、速度的には、ADSLとしては遅いのですが、ISDNよりは遙かに速い速度で利用できるので、12Mプランを利用するメリットはあると思いますが、本来のブロードバンド速度を求める方は、Bフレッツなどの線路距離に影響されないサービスを選択するしかないでしょう。

    ※ 将来的には、Bフレッツなどの光方式が主流になるとは思いますが、まだまだ、ADSLの方が安価なことは確かです(速度あたりの単価で言えば、安いのですが・・・)。

■ 参考(あくまでも目安です)

↑ フレッツでの特性ですが、他社の特性もある程度は類似しているので、参考になります。

※このグラフから得られる伝送損失と伝送速度の関係は検証データであり、理想的な場合での最大値の伝送特性。  

 線路状況や宅内の配線状態によって、必ずしも上図のような特性になるとは限らない。

 スループット(実効速度)は、インターネットなどのネットワークの混在状況や使っているパソコンの性能などにより左右されるので、必ずしも上図のような特性にはならない。


★ 参考

・ちなみ、私の場合は仕事では、フレッツADSLやYahoo!BBのADSLやBフレッツ導入に立ち会いましたが、自宅は、2003年4月にやっとISDNからADSLに変更しました。

交換所からの距離は約5.5Km、損失約50dBと1.5Mプランでも使えない可能性があり、ISDNから切り替えはリスクが大きかったので、長距離タイプのモアの提供エリアになるのを待っていました。

Bフレッツも可能でしたが、予算の関係でとりあえず、フレッツADSLモア(12Mタイプ)にしました。

結果は、5.5Kmの距離はおおきな障壁となり、速度的には、下りが450Kbps弱、低い周波数帯を使う上りは700Kbps弱という状況です。

ISDNから、アナログダイヤル回線に戻したことで、電話の基本料が下がったこととADSLの料金が値下げされたことで、結局、全体の月額費用は月500円程度安くなり、ISDNに比べると、明らかに快適な環境になりました。